Story
心地良さを追求した専門家のこだわり
ブランド作りのきっかけやエプロン作りに関わる専門家の思いや考え、
毎日使うことを考えた機能性・心地良さを追求するためのこだわりのデザイン、素材、染色方法など、ものづくりの裏側をお伝えします。
A Start 〜はじまり〜
着心地、デザインの理想を求めて。
食に携わる仕事をしていれば毎日使うエプロン。 デザインが気に入って購入したものも、エプロンして仕事をすればすれほど首や肩が疲れていき、肩や首のメンテナンスをする毎日。ここ10年で試しに購入してみたエプロンは数え切れないほどあるのに、その中でも使うのは1、2枚ほど。。 エプロンをしない方が体に負担が掛からなくて良いのかも。と思ことも。 「疲れにくく、着心地が良くてデザインも気に入るものがないんだよね。」という話を何気なく同業の方にしたら、「私も!」と。 「このエプロンのココは良いんだけど、ここはこっちのエプロンが良いんだよね。。」と話が盛り上がりました。 そういえば、アシスタント時代もこういう話を他の現場でも何度かしたな。。。と思い出したのがきっかけで、同じ思いをしている人が私の周りにももっといるのではないか、もし理想的なものが作れれば、自分の周り以外にもエプロンをして仕事をしている人々の役に立てるのではないか。と思い、「自分たちでこだわりあるものを作ろう!」と立ち上がりました。 まずはフードコーディネーターさんにもご協力いただき、自分たちで理想的なエプロンのパターンを引くところから始まりました。
Fabric 〜生地選び〜
エプロンに最適な生地とは
生地は漠然と、”丈夫でしっかりとカバーしてくれるもの”が良いなと思っていました。 しかし業者さんにサンプルをお願いすると、「丈夫でエプロンに合いそうなもの」と一言で言っても想像以上の種類があり、特徴もそれぞれ。肌触りや織り方、糸の太さ、色合いなど様々。 一つひとつ目で見て触れて確認していく中で、丈夫だけど肌触りも良く、乾きやすく、ある程度厚みのあるもの。 それがエプロンの生地に求められるものだと思い、探していきました。 最終的に選んだのが、ラミー・リネンとリサイクルコットン の2つの素材。 ラミー・リネンはリネンの中でも丈夫で厚みがあり、素材感が気に入り、リサイクルコットンはしっかりとした厚みを持っており、揚げ物をするときの飛び跳ねなど、日常以上にカバー力が必要な時に使いたいと思い、取り入れることにしました。 どちらも、布製品が作られる時に出た切れ端や繊維くずなどを集めて再び布にした生地で、そこも魅力の一つです。
Rammy linen ラミー・リネン
ラミー・リネンは、一度リネン製品を作る際に出てきた切れ端や繊維を再び布に加工した生地のため、強度もあり、汗ばんでも肌に密着せず、快適に過ごすことができる生地です。 水に濡れると強度が増すため、何度も繰り返しお洗濯を必要とするエプロンにふさわしい素材です。
Recycle cotton リサイクルコットン
生地を作る工程で発生した繊維くずや糸、残り生地など廃棄処分されていたものを細かく砕いてわた状にし、再び糸に織り上げて生地にしています。 すでに色がついている切れ端を使用するため、再び染色する必要がなく、CO2の排出量や水の使用量を節約できるメリットがあります。 味わい深くざっくりと織り上げた武骨でヴィンテージライクな生地は、使えば使うほど表情が変わっていくのを楽しめます。 厚みがあるので、しっかりと汚れをカバーしてくれるのが特徴です。
Dyeing 〜染色〜
優しい風合いの由縁
生地選びをしていた際に、たくさんの生地の中から他のものとは違う、優しい柔らかな風合いが伝わってきたのがのこり染の生地でした。 この柔らかな自然の色がどこから来るのかを聞いてみると、ワインを作る際に出てきたぶどうの搾りかすや、和菓子屋さんで使った後の栗の皮、規格外で市場に出回ることのなかったほうれん草など、食材の"のこり"を染料にして染色しているものでした。 そのような取り組みをしている染色工場さんに感激し、その考えに共感したため取り入れることにしました。
個性豊かな自然の恵み
染色工場の隅に置かれている業務用冷蔵庫。 染色工場に冷蔵庫なんて場違いですが、中には、一見生ごみにしか見えない食材の残渣=“のこり”ものが冷蔵されています。 お菓子屋さんやワイナリーなど、食品や草花を扱うお店から役目を終えたものが”のこり”ものとして集められます。まだほのかにフルーツの香りや木の良い香りが残っています。 食材から色を抽出するには、のこり染専用の大きなお鍋を使って1色ずつ煮出していきます。 その時に預かった“のこり”ものの状態や気候などで、出てくる色も変わってくるのだそう。 それが自然の恵みと付き合っていくという意味でもあり、個性豊かな製品が生まれてくる楽しさでもあります。 抽出した色素を原料に、試し染め→色味確認→本染め→乾燥して布として完成します。
天然繊維を扱うということ
のこり染に使う天然繊維ラミー・リネンを天然染料で染める場合、高温で染色や乾燥を行うと生地が傷んでしまうため、のこり染専用の低温で行える染色機や、乾燥機で染色、乾燥を行っていきます。 人の手も多くかかり、染め上がりに時間もかかるため、一度に大量生産を行うことができません。 天然のものに安定性のない自然の色を染めるということは、思っている以上に大変なことなのです。
Design 〜デザイン〜
3から10のこだわりへ
はじめに、フードコーディネーターさんにご協力いただき、エプロンを選ぶ条件を伺いました。店主の意見も加えて3つの条件が出てきました。 ・長時間着ていても肩が凝らないたすき掛けタイプ。 ・仕事道具が入れやすいポケット。 お箸でポケットにお箸を入れることで穴が空いてしまうのを防ぐ。 ・着崩れしないデザイン 腰ひもにタオルをかけるとそこから着崩れてしまう。 食を扱う仕事をしている以上、やっぱり清潔感とスマートさは必須。ということで、この3つの条件を踏まえてサンプルを作成していきました。 しかし、生地との相性もあり、理想とはかけ離れた形に……。 もう一度ふりだしに戻り生地の選び直しを。
さらに、料理研究家、シェフの方々など食の仕事をする多方面の方にエプロンのこだわりを伺うとたくさんのことが上がってきました。 ・後ろ姿も美しくいられるように、お尻が隠れるようなデザイン。 ・素材はリネン。質感、見た目が良く、体にフィットしやすい。 ・頻繁に洗濯するものだから、乾きやすい素材がいい。 ・服の色を選ばない何にでも合う色。 ・汚れても漂白できる白。 ・どんなコーディネートも選ばない、カバー力のある丈感。 ・ポケットは必要最低限に、後ろ側にスマホ用ポケット一つだけ! ・ひもは前で結んで仕事モードをONできる形。 言われてみれば、無意識にそのようなものを選んでいたかも。と気付かされるご意見ばかり。特に後ろ姿は、自分から見えない場所だったので重要性に気付いていませんでした。これらを踏まえて再度修正へ。 さらに、上がってきたサンプルを何人かのフードコーディネーターの方々に実際に着用して仕事をして頂き感想を頂き、ポケットとボタン穴、タオル掛けの位置・大きさ、ひもの幅、長さなど、細かい部分の調整が続きました。 最終的に、着た時の着用感と実際に使った時の使用感に相違が生じ、4回の修正を経て、今の10のこだわりが詰まった形が完成しました。
Sewing 〜縫製〜
1枚ずつ手作業で作られていくエプロン
丈夫さが求められるエプロンですが、縫製が甘くてほつれてきてしまったり、ボタンが外れてしまわないように、一つずつ丁寧に国内で縫製しています。 縫製の段階で出てきた端切れは、パッケージのリボンとして再利用しています。
Packaging 〜パッケージ〜
ごみを出さないパッケージを目指して。
パッケージをどうするかと考えた時に、手に取った瞬間笑顔が浮かぶものがいいなと思い、パッケージ作りにも気合いを入れていました。 第一条件として、エプロンの端切れを使いたいと言うことは決まってたものの、形は漠然としていました。 パッケージ作りと向き合っていくうちに、いくら素敵なパッケージを作っても、包みを開けた瞬間からその役割を終え、そのままゴミ箱へ向かうのがパッケージの宿命。。 またゴミを作り出している現実に直面しました。 そこで、購入した方にも再利用したいと思えるものをパッケージにしたい!と思い、試行錯誤が始まりました。 エコバッグに包むのがいいのか、何が良いのか...キッチンで使えるものを探している時に"さらし"に出会いました。 もちろん、耳にしたことはありましたが、出汁を濾す時に使うものだという印象。 出汁だけではなく、ラップの代わりになったり、滑り止めになったり、使い方がいろいろあることを知り、これだ!と即決‼︎ そして、はぎれのリボンで結んでパッケージは完成しました。 これをきっかけに自身のキッチン周りをよりサステナブルなものにならないか見直したのも良い機会でした。 パッケージとしての白い"さらし"が、様々な食材の色で染まり、最後はお掃除に使うことで真っ黒になってゴミ箱へ向かいますように。